2019年9月発売/四六版 448頁 ISBN978-4-7759-4214-7 定 価 本体各1,800円+税
著 者 マーク・カーランスキー 訳 者 髙山祥子
北海道新聞(2019年10月27日付)11面 読書ナビにて、本書の書評を掲載いただきました。
「本書は日本牛乳史の比較の視点を得るのに役立つ(中略) 多くの人たちが下痢や病気に苦しんだ。それを防ぐための努力の歴史、つまり、ヨーグルト、チーズ、バターなどの発酵食乳製品の文化史、あるいは低温殺菌技術が導入されていく科学史も本書の読みどころである」(農業史研究家 藤原辰史様)
みなさんは、毎日、何も気にすることなく牛乳や乳製品を手にしていることでしょう。ミルクは飲む栄養素としてだけではなく、チーズ、バター、ヨーグルト、アイスクリームなどに加工され、広く親しまれています。
しかし、ミルクはもともと新生児に栄養を与えるためのもの。成長にともない、ミルクを消化吸収する機能は低下するにもかかわらず、人間だけが幼児期を過ぎてもミルクを摂取しています。そこまでわたしたちを魅了するミルクの歴史を本書で紐解いてみましょう。
ミルクの長所と危険性は少なくとも1万年以上にわたって議論されています。人類で最も長く続いている食品に関する審議です。牛乳は、米国で安全テストをされた最初の品目であり、今日では、世界の大半で安全性が定められている食品です。
18~19世紀には牛乳を飲むことが流行し、ヨーロッパとアメリカでは母乳の代用品として人工のミルクによる育児が主流となっていきました。ところが、人工のミルクへ移行した際にニューヨーク、ボストン、シカゴ、ロンドン、パリなどの大都市で乳幼児の死亡が相次ぎました。特にニューヨークのマンハッタン地区ではひどく――ビール醸造所のとなりで乳製品が製造されていたためにビール製造で残ったスロップが牛に与えられていた――1840年代にはマンハッタンで生まれた赤ちゃんの半数近くが幼児期に死亡するという深刻な事態陥りました。その後、研究が進んで細菌の存在が明らかになり、低温殺菌処理が施されることになりました。しかし、ここで生乳のほうが健康的で味が良いという議論が生まれて……。
安心かつ安全な食品ではないにもかかわらず、ミルクに対する人間の情熱が消えることはありません。古代からの議論に続き、現在でも新たな論争が生まれています。工業型農業における動物の権利擁護から狂牛病問題、遺伝子組み換え作物、低温殺菌しない生乳の是非など、常に健康と倫理、経済の板ばさみになっています。
ミルクと乳製品が完璧な食品だったとしたら、歴史はどのように変わっていたでしょうか? この人類の難題を一緒に考えてみましょう。
謝辞 参考文献
■ 185ページ 7行目 誤)三億七〇〇〇リットル 正)三億七〇〇〇万リットル
■251ページ 後ろから7行目 誤)一八五〇年の頭数は、 正)一九〇〇年の頭数は、
■ 270-272ページのページ繰り(PDFはこちら) 270-271頁と272-273頁が逆順になっていますが、 正しくは、269頁から272頁→270頁→271頁→274頁です。
ページのトップへ
トレーダーズショップから送料無料でお届け