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ウィザードブックシリーズ Vol.126



トレーダーの精神分析
自分を理解し、自分だけのエッジを見つけた者だけが成功できる

『悩めるトレーダーのためのメンタルコーチ術』
も好評発売中!

2007年9月発売/四六判 上製本 494頁
ISBN 978-4-7759-7091-1 C2033
定価本体2,800円+税

著者●ブレット・N・スティーンバーガー
訳者●関本博英

トレーダーズショップから送料無料でお届け

著者紹介 | 目次 | 序文 | 訳者あとがき | 関連書籍 | 読者のご意見
著者

ブレット・
スティーンバーガー

原書

『Enhancing
Trader
Performance』

「メンタル面の強靱さ」がパフォーマンスを向上させる!

性格や能力にフィットしたスタイルを発見しろ!
「プロの技術とは自分のなかで習慣になったスキルである」
メンタル面を鍛え、エッジを生かせば、成功したトレーダーになれる!

トレードとはパフォーマンスを競うスポーツのようなもので、オリンピック選手や 陸海軍のエリート部隊、パフォーマンスアーティストなどと同じように、トレーダー も訓練によってその能力に磨きをかけ、プロのレベルに達することができる。本書で はトレーダーの指導と自らのトレード経験に基づくトレーダーのスキルアップの方法 をはじめ、彼らが直面するいろいろな心の悩みとその解決策についてもかなり詳しく 論じている。 筆者は前著『精神科医が見た投資心理学』(晃洋書房)のなかで、トレーダーのい ろいろなメンタルな問題にスポットを当て、それを乗り切る心のあり方などを紹介し た。本書ではそのプロセスをさらに一歩踏み込んで、体系的な訓練と自らのエッジ (強み)を生かすことによって、トレーディング技術をプロのレベルまで上達させる 方法がさまざまなパフォーマンス分野の例証によって詳述されている。 本書で論じられているテーマは次のようなものである。

トレードのパフォーマンスを向上させるには偶然やランダムさに振り回されるので はなく、それらを意識のプロセスに乗せて適切に処理しなければならない。それによ って意識的な意思決定ができれば、ダイナミックなマーケットにもうまく対処できる だろう。深い洞察力と実践的なアドバイス、詳細なリサーチデータとトレーダーの豊 富な実例などが盛り込まれている本書は、難しいマーケットに臨むときの素晴らしい コンパス(羅針盤)となるだろう。


本書への賛辞

「『安定した心がないトレーダーは、安定したトレードをすることはできない』というくだりを読んでハッとした。トレードで成功したいトレーダーは、本書を再読・ 再々読すべきだと思う」
――ケン・ウッド氏(www.woodiescciclub.com)

「本書を読んで、トレードの成功条件であるメンタルな強靱さは習得できること、そしてあらゆる分野のパフォーマンスの原則はトレードにも応用できることを知った。さらに、日常生活における自分のエッジやプラス思考などが難しいマーケットの世界でも生かせることを知ってうれしくなった。駈け出しからベテランまですべてのトレーダーは、本書から大きな勇気をもらうだろう」
――リンダ・ブラッドフォード・ラシュキ女史(『魔術師リンダ・ラリーの短期売買入門』著者、LBRグループ主幹兼全米屈指の女性ウィザード)

「スティーンバーガー博士はパフォーマンスの向上を目指す多くのトレーダーに、『自分自身に目を向けろ』という素晴らしいトレーディングツールを教えてくれた。ベテランのファンドマネジャーから駈け出しのトレーダーに至るまで、自分のエッジを最大限に生かすためには、本書で述べられた正しい学習プロセスを実行しなければならない」
――ラリー・コナーズ氏(『魔術師リンダ・ラリーの短期売買入門』著者、Tradingmarkrts.com の CEO)


「成功しているトレーダーは、トレードの成功はテクニカルな知識の有無ではなく、自分自身をよく理解し、自らのエッジを生かしながら、規律ある一貫したトレードを心掛けることによってもたらされることをよく知っている。本書では成功するトレーダーとなるために、自分の能力と個性、スキルとチャンスをうまくフィットさせることの大切さとその方法が詳述されている。トレードで成功したかったら、まずは本書を熟読することである」
――ジェームズ・ドルトン氏(ベテラントレーダー、『Mind Over Markets』『Markets in Profile』の著者)




著者/ブレット・N・スティーンバーガー(Brett N. Steenbarger)

ニューヨーク州シラキュースにあるSUNYアップステート医科大学で精神医学と行動科 学を教える客員教授。2003年に出版された『精神科医が見た投資心理学』(晃洋書 房)の著書がある。シカゴのプロップファーム(自己売買専門会社)であるキングズ トリー・トレーディング社のトレーダー指導顧問として、多くのプロトレーダーを指 導・教育したり、トレーダー訓練プログラムの作成などに当たっている。また、統計 的なパターン認識に基づく株価指数のアクティブなトレーダーでもある。投資家・ト レーダー向けに営利のサービスは提供していないが、私的なウエブサイトやブログを 通じて、ヒストリカルなマーケットデータや投資心理に関する研究結果などを公表し ている。スティーンバーガー博士のブリーフセラピー(短期療法)に関する研究は、 心理学や精神医学の文献にしばしば引用されている。



目次

序文
謝辞
注記

第1章 プロの技術はどこから生まれるのか――パフォーマンスのニッチ
第2章 トレーディングのニッチを見つける
第3章 能力を磨く――パフォーマーのレベルアップ
第4章 能力を磨く戦略
第5章 単なる能力からプロの技術へ――大きく成功するトレーダーとなるには
第6章 技術・戦術・戦略――トレーディングの成功に至る道
第7章 パフォーマンスのダイナミクス――自己観察とパフォーマンスの向上
第8章 パフォーマンスを向上するための認知療法
第9章 パフォーマンスを向上するための行動療法
終章 プロトレーダーの肖像
最後に

付録――参考資料
参考文献

訳者あとがき

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序文

「困難が大きければ大きいほど、それを乗り越えたときの栄光もまた大きくなる。大きな名声を博するのは、暴風雨や大嵐のなかを飛ぶ高度な技術を持つ飛行士だけである」――エピクテトス

 本書はまさに暴風雨と大嵐のなかから生まれた。前著『精神科医が見た投資心理学』(晃洋書房)が刊行されてからほぼ一年後に私は学問の世界を去り、暴風雨が吹き荒れるシカゴのプロップファーム(Proprietary Trading Firm=自己資金だけを運用するディーリング会社)に身を投じた。ニューヨーク州シラキュースの診療所でクライアント(患者)のセラピー(治療)に当たっていた日々は、はるかかなたに過ぎ去ってしまった。今の生活は朝の四時五分に始まり、深夜にまで及ぶことも珍しくない。海外各地市場をフォローする何台ものコンピューターのうなるような音、常にアップデートされるリサーチ情報、トレードに没頭するトレーダーたちをサポートするためのフロアからフロアへの移動、帰宅したあと翌日の準備作業などに忙殺される毎日である。前著が象牙の塔(学問の世界)から心理学と実際のトレードとの融合を試みたものであるのに対し、本書はトレーディングの最前線に身を投じ、その現場でトレードの正しいあり方を追究したものである。

 投資心理学からトレーディングの現場に至る曲がりくねった道

 前著の執筆を終えた二〇〇二年後半から現在までに、状況は目まぐるしく変わった。私のeメールボックスにはありとあらゆるマーケットのトレーダーからメールが寄せられ、また私のウエブサイトやブログ(日記形式のホームページ)にはヨーロッパやアジアのほか、環太平洋地域のトレーダーからもアクセス件数が一週間に何千件にも達している。それらを通じて、私は全世界のトレーダーの夢と希望、いろいろな悩みや欲求不満と毎日向き合っている。これはトレーディングの現場で働くトレーダーにとっての特権でもあり、また挑戦でもある。

 なかでも私が所属するシカゴのキングズトリー・トレーディング社のディーリングルームで目にするトレーディングの最前線ほど興奮するものはない。私はそれまで実際のトレーディングとトレーダーを目の当たりにしたことはなかったが、今ではまさにリアルタイムなトレードの真っただ中にいる。その結果分かったことは、先物一〇〇〇枚のポジションが予想とは逆行したトレーダーとその対処策について話し合うことと、同じポジションがティック(最小価格単位)当たり一万二五〇〇ドルの損失になっているトレーダーと一緒にトレードに当たることはまったく別だということである。こうしたディーリングの最前線に毎日いると、トレーディングとトレーダーについて多くのことを知るのはもちろん、自分自身についても実に多くのことを学ぶ。本書はまさにそうした学習の集大成である。

 すべての価値ある本は交響曲のようなものである。一見するとばらばらのように見えるが、それが追求するひとつのテーマできっちりとまとまっているからだ。著述家としての大きな喜びのひとつは、前著『精神科医が見た投資心理学』が刊行当時と同じように今でも売れ続けていることである。その理由のひとつは、トレーダーが直面する心理的な問題という主要なテーマが、人生におけるリスクや不確実性という点で共通するものがあるからだろう。人生と同じように、投資の心理でも単純なアドバイスではとても対処することはできない。

 前著と同じような興味あるテーマが見つからないうちは、新しい本を執筆しようとは思わなかった。著述に携わるものにとって、書籍とは貴重なものである。書籍を通じて現在はもとより、まだこの世に存在していない将来の多くの人々とも出会えるチャンスがあるからだ。われわれはこの世で永久に生きることはできないが、書籍はわれわれよりもずっと長く生き残って、次世代の人々に感動を与えることができる。皆さんも著述家であればそうしたチャンスを生かしたいと思うだろう。

 本を執筆するというのは人生を生きるようなものである。どちらの場合も頭にきちんといろいろなプランを描いてスタートするが、あとから振り返ると現在までの道のりは何と曲がりくねっていることか。自然界を見ても植物や雲、丘や平原などの輪郭や縁などが真っすぐであることはほとんどなく、すべてはねじれ曲がっていたり、ギザギザだったりする。この世には整然としているものなどほとんど存在しておらず、それが現実の姿である。著述家が書くこともこれとまったく同じであり、筆者が自分の本に望むベストのことは人生と同じようにそのテーマに忠実であること、すなわちその道のりがねじれたり曲がっていようとも、誠意を持って書き進むことである。

 本書の道のりもかなりねじれたり曲がったりしているが、そのテーマは常に一貫している。すなわち、「トレーディングのパフォーマンスとはそのトレーダーの心理や規律を反映したものである。トレーディングの技術はスポーツ、チェス、パフォーマンスアート(実演芸術)など、あらゆる分野における技術と同じであり、正しい訓練を通じて習得することができる」。このテーマを実証するために、私はさまざまなプロスポーツ選手、陸海軍のエリート部隊、医療分野のプロなどの訓練プログラムを詳細に検証したほか、とりわけキングズトリー社で一緒に働くトレーダーたちをつぶさに観察することで、トレーディングで成功し続けるための条件を明らかにしようとした。

 こうした探究の結果を一言で言えば、「トレーディングのパフォーマンスとは、そのトレーダーが何を学んだのかというよりは、どのように学んだのかによって決まる」。トレーディングの技術とはそうしたプロセスの結果にすぎない。このプロセスにははっきりと確認できるいくつかの特徴があり、それはトレーダーの成長と密接に関連している。こうしたプロセスはオリンピックに出場したアスリートのほか、世界でも一流の製造工場やいろいろな教育プログラムにも見ることができる。「何を学ぶのか」は常に変化し、内科医は最新の医療技術に遅れないように、またトレーダーはいろいろなマーケットの環境に対処できるように学ぶことが求められる。これに対し、「どのように技術を磨いていくのか」は今も昔も変わることはない。古代ギリシャで確立された技術習得のプロセスは、現代のどのような分野でも依然として立派に通用するだろう。

 トレーディングの成功条件の追究とトレーダーたちとの日々のディーリング活動を通じて私が最も大きなショックを受けたのは、「トレーダーたちが直面する心の悩みのかなりの部分は、きちんとした訓練の原則から逸脱したことに起因している」ことが分かったことである。トレーダーたちが、①自分の能力や性格に適していないマーケットやトレーディングスタイルを取り入れているとき、②自分の能力をプロレベルのスキルにまで向上できるような体系的な訓練を受けていないとき、③大きな利益をすぐに望むあまり、正しいリスクマネジメントを行っていないとき――には、欲求不満や心的外傷(心のトラウマ)を抱くことになる。

 トレーダーが体系的な訓練を受けていない結果、自らのトレード技術に自信が持てなければ、常に変化するマーケットの環境に適応していくことはできない。この事実は私が荒れ狂うトレーディングの現場で実際に目撃したことであり、この世界では今日の成功は明日の成功を保証するものではない。マーケットの環境やニッチは急激に変化していくので、永続的な成功はだれにも保証できない。トレーディングの世界における勝者とは正しい訓練を受け、いっそうのレベルアップを常にめざして努力している人々である。本書は持続的な成功をめざすトレーダーだけでなく、その目標に向けて日々努力している人々のために書かれた。

 いろいろな分野の研究結果やさらなるレベルアップをめざしてトレーニングに励むアスリートたちの現場体験に基づいて書かれた本書は、トレーディングという最も見返りが多く、それゆえにチャレンジに満ちたこの世界で高いパフォーマンスを上げ続けるには何が必要なのかをじっくりと考えるのに役立つだろう。トレーディングの世界では何を学べば成功できるのかについては多くのことが語られているが(チャートパターン、各種指標の読み方、株価分析ソフトなど)、そうした技術をどのように習得するのかについてのガイドブックはあまり見られない。本書がトレーディングばかりでなく、成果が問われる人生のすべての分野で成功するためのガイドブックとなれば幸いである。

 将来を見通す

 トレーダーの将来は急激に変化する。最近のコンピューターによる自動トレーディング、裁定取引、マーケットのグローバル化の進展などは、われわれに新しいチャンスを提供している。こうした状況下ではトレードする時期やその方法を知るだけでは十分ではなく、何(最も大きなチャンスが存在するマーケット)をトレードするのかも同じく重要になってきた。いくら腕のよい漁師でも魚のいない場所にいくら釣り糸をたれても獲物は得られないからである。今の多くのトレーダーはまさにこの漁師のようなものである。従来のトレード手法(インデックス投資やモメンタム投資など)などはもはやあまり役に立たなくなった。私が最近「トレーディング・マーケッツ(Trading Markets)」サイトに書いたように、過去四〇年間にわたりS&P五〇〇の二日間のトレンドの有無について調べたところ、そのグラフは緩やかな下降曲線となった。しかし、(特にプログラム取引や裁定取引などのバスケット銘柄には含まれない)個別銘柄の多くは上向きの曲線を描いた。これからも分かるように、高いパフォーマンスを上げるには自分のトレーディングスタイルにマッチしたマーケットやセクターを知る必要がある(詳しくは巻末に掲載したウエブサイトやブログにアクセスしてください)。

 本書ではトレーダーたちのディーリングの現場のほか、激しく変化するトレーディングの世界にもスポットを当てた。これまでトレーダー教育の多くは出版物やセミナー、その他の情報提供という形で行われてきたが、これからは規律の習得を含めたプロのトレーダーの育成・訓練が主流になっていくだろう。すでにトレーディングソフトの分野ではその動きが始まっている。われわれは数年前には株価分析、チャート、スクリーニング、注文執行などのソフトを個別に使っていたが、最近ではそうした機能がひとつのソフトに統合されつつある。そうなれば、トレーディングプランの作成からリスクマネジメントまでの一連のトレーディングプロセスがひとつに合理化されるだろう。私はこのほどCQG社のジョー・コーネン氏と会い、同社のサービスについて話し合ったが、そこでは株式の板情報やチャート、分析ツール、注文執行などがひとつの画面上で表示され、マウス操作だけですべてのプロセスが処理できるという。すでに電子トレーディングではこうしたことが当たり前になっている。私はこうした技術がさらに進展していけば、リアルタイムな模擬トレード、パフォーマンスの詳細なフォロー、膨大なヒストリカルデータの保管・利用などが簡単にできるトレーダーの教育・訓練プロセスの統合が実現できると思う。リアルタイムな注文執行を含むこうしたトレーダーの教育・訓練プロセスが統合化されれば、さらに高度なソフトやシステムも開発されるだろう。

 トレーディング産業の歴史は民主化のプロセスと同じである。機関投資家が利用できるサービスは次第に一般投資家にも普及していった。それには各種情報やリサーチの利用、プレーグラウンドの平坦化、パソコンとインターネットの普及による売買手数料の引き下げ、マルチマーケットのリアルタイムな情報の入手、複雑なトレード戦略の実行などが含まれる。こうした流れはこれからも続いていくだろう。現在ではカウンセリングの専門家やメンター(指導者)を社内に抱えているプロップファームはごく一部に限られているが、近い将来には(テレビ会議などを含む)オールインワンのトレーディングツールでトレーダーのリアルタイムな教育や訓練が可能になるほか、こうしたプロトレーダーの訓練ツールも一般投資家に普及していくだろう。本書がその一里塚になれば望外の喜びである。

 そしてさらに重要なことは、自分の将来を展望することである。高度なトレード技術を習得したいと思うとき、皆さんはその目標達成のプロセスをご存じであろうか。トレーディングの持続的な成功を可能にする技術をマスターするには、何をすればよいのだろうか。オリンピックで金メダルを勝ち取るにはそれに見合うトレーニング、すなわち自分の能力を高度なスキルにまで高め、さらに優勝という実際のパフォーマンスに結び付けるための訓練プロセスが必要である。本書では単にトレーダーの育成にスポットを当てたものではなく、あらゆる分野でパフォーマンス(成果)を上げるための方法が論じられている。あなたがトレーダーになるかどうかは別として、パフォーマーとしてどのような分野でもパフォーマンスを上げられる自分なりの方法を見つけてほしいと思う。それができれば自分自身をマスターしたと言えるだろうし、そうなれば今の自分よりも一回りも二回りも大きくなった自分に気づくだろう。

 二〇〇六年三月

ブレット・スティーンバーガー(イリノイ州ネーパービル)



訳者あとがき

 「トレーディングとはパフォーマンス(成果)を競うスポーツのようなもので、ほかのいろいろなパフォーマンスの分野と同じように、生まれながらの能力と個性を訓練と時間をかけてプロのレベルまで高めていくプロセスである。トレーダーはマーケットという大きなプレッシャーのかかる競技場で、自らのスキルをプロのレベルまで向上しないかぎり、トレーディングの成功を手にすることはできない」。筆者のこの言葉ほど、本書のポイントを端的に表しているものはない。
 単なる能力のあるトレーダー(トレーディングのコストを何とかカバーできる投資家)の程度ではダメだ。トレーディングで飯を食っていけるほどのレベルにならないと、相場の世界では成功はおろか、生き残っていくこともできない。それならば、プロのトレーダーとなるにはどうすればよいのか。一言で言えば、スポーツ、チェス、パフォーマンスアート(実演芸術)など、あらゆるパフォーマンスの分野の技術と同じように、「正しい訓練によって正しいトレーディングの技術を身につける」ことである。

 本書は二〇〇三年に出版された『精神科医が見た投資心理学』(晃洋書房)に続くスティーンバーガー博士の二冊目の投資心理に関する著書である。もっとも、前著は象牙の塔(学問の世界)に身を置くカウンセラーとして、主にトレーダーの心の問題にスポットを当てたもの。これに対し、本書はトレーディングの最前線に自ら身を投じ、トレーダー指導顧問として現場のトレーダーたちとじかに接することによって追究したトレーディングの正しいあり方とプロ論である。
 一方、前著と同じように、本書でもトレーダーたちが直面するいろいろな心の悩みが取り上げられている。筆者によれば、その主な原因は、①正しい訓練を受けないでトレードした、②自分の資金規模とリスク許容度を超える大きなポジションを取ったり、頻繁なトレードを繰り返した――ことによるもので、その結果は大きな損失という形で表れる。それによる精神的なダメージは、銃砲がとどろく戦場や暴行を受けたときに被る心的外傷と同じものであり、その影響は一過性のものではなく、程度の差はあってもけっして消えることのない外傷性のストレスとしてトレーダーの心のなかに沈殿するという。

 本書では主にトレーディングを含むいろいろなパフォーマンスの分野のプロ論、トレーダーの心の悩みとその解決策などが論じられている。もちろん、この二つは別個に存在するのではなく、いわばひとつの問題の表裏のようなものである。スティーンバーガー博士はこれらの問題についてかなり多角的な観点から深くメスを入れており、読者の皆さんはそれぞれの問題意識に応じて必ずや何らかの貴重なヒントを得られるだろう。筆者が最後に述べているように、「(たとえあなたが)トレーダーとは違う道に進んでも、自分のエッジを見つけ、意味ある人生から満足と充実感を得る」ために、本書が多少なりとも役立つならば、訳者としてこれ以上の喜びはない。

 本書の邦訳を決定された後藤康徳(パンローリング)、編集・校正の阿部達郎(FGI)の両氏には心よりお礼を申し上げたい。

 二〇〇七年八月

関本博英

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